技術提案事例

金型の喰い切り刃調整により、成形品の肉厚を安定化

お客様の課題:ブロー成型品の肉厚の安定化

ブロー成形金型の設計・製作において、取っ手のある製品の金型の場合、取っ手部分の肉厚の成形が安定しないことが課題にあります。中身が液体の場合、取っ手の肉厚部分の成形が安定しないと、液体の漏れが発生する可能性があります。また、特に液体が危険で漏れてはいけないものの場合、使用者の安全性を確保することがあるために考慮した設計・製作をする必要がありました。

技術的背景:ブロー成形における喰い切り刃の重要性

ブロー成形における「喰い切り刃(ピンチオフ)」は、金型が閉じる際に溶融した樹脂の筒(パリソン)を挟み込み、製品部分と不要なバリ部分を分離・溶着させる極めて重要な役割を担います。この喰い切り刃の形状や精度が不適切だと、パリソンを均一に挟み込むことができず、樹脂の流れが阻害されます。その結果、特定の部分で樹脂が過度に引き伸ばされて肉厚が薄くなる「薄肉」や、逆に不均一になる「偏肉」といった成形不良が発生します。特に複雑な形状を持つ取っ手周りでは、この現象が顕著に現れます。

当社の提案:喰い切り刃と冷却回路の最適化


当社は、長年のブロー金型製造で培った知見に基づき、単一の対策ではなく、金型全体のバランスを考慮した統合的な改善策を提案しました。具体的には、第一に「喰い切り刃のテーパー形状化」です。刃先に適切なテーパー(傾斜)を設けることで、パリソンを急激に潰すのではなく、滑らかに圧縮・溶着させ、樹脂の流動を安定化させます。
第二に「冷却回路の最適化」です。取っ手のような肉厚が変化しやすい部分の冷却を強化することで、樹脂が意図せず伸びてしまう前に素早く固化させ、設計通りの肉厚を確保します。この二つのアプローチを組み合わせることで、成形プロセスの安定化を図りました。

本提案の導入により、取っ手部分の肉厚は安定し、製品の割れや液漏れといった不良がほぼ根絶されました。製品の安全性が確保されただけでなく、不良率の低下によるコスト削減と生産性の向上を実現しました。

扶桑精工は、目先の不具合修正に留まらず、成形プロセスの原理原則に立ち返り、金型設計の根本から課題を解決する提案力でお客様の安定生産をサポートします。