技術提案事例

ハイサイクル成形における寸法精度の改善。楕円変形を予測した金型微調整技術

お客様の課題:丸型の成形品が楕円になってしまう

ハイサイクル(高速)成形において、本来は真円であるべき製品が、成形後に冷却収縮の影響で楕円形に変形してしまうという寸法精度の問題が発生していました。生産性を維持しつつ、製品の幾何公差を満足させることが喫緊の課題でした。

技術的背景:ハイサイクル成形と冷却収縮の課題

ハイサイクル成形は、サイクルタイムを極限まで短縮することで生産性を最大化する手法ですが、その代償として冷却時間が不足しがちになります。金型内で十分に冷却されず、高い温度のまま突き出された成形品は、金型から解放された後に残留応力や不均一な冷却によって変形を起こしやすくなります。

特に、円筒形状の製品では、樹脂の流動方向や分子配向、冷却回路の配置など、様々な要因が複合的に影響し、真円度が崩れて楕円形に変形する現象が頻繁に見られます。この変形量は、成形条件だけでなく、金型の構造にも大きく依存します。

扶桑精工の提案:変形予測に基づく逆補正と高精度肉盛り加工

リバースエンジニアリング

この課題に対し、扶桑精工は成形品を削って寸法を合わせる対症療法ではなく、金型自体を修正する根本的な解決策を提案しました。まず、現状の成形品を三次元測定器で精密に測定し、楕円変形の方向と量を正確にデータ化します。

次に、その変形量を逆算し、「成形直後は意図的に逆方向の楕円形状になるように」金型を微調整します。これにより、成形品が金型から突き出された後に冷却収縮することで、最終的に狙い通りの真円形状に落ち着くように設計します。この「逆補正」の実現には、μm単位での精密な金型加工が不可欠です。扶桑精工は、一般的な削り加工による調整だけでなく、より難易度の高いレーザー溶接などを用いた「肉盛り」による形状修正にも対応しており、高精度な金型改造を実現しました。

金型の精密な逆補正により、ハイサイクル成形を維持したまま、製品の真円度を公差内に収めることに成功しました。これにより、品質と生産性の両立が実現し、お客様の競争力向上に貢献しました。

扶桑精工は、単なる金型加工に留まらず、成形プロセス全体を理解した上で、変形予測のような高度なエンジニアリングに基づく最適なソリューションを提供します。