コラム

ブロー成形における肉厚の不良と対処法とは

ブロー成形金型とは

ブロー成形金型とは、その名の通り、ブロー成形に用いられる金型のことです。
ブロー成形とは、溶解した樹脂を空洞になるように金型で挟み、その後閉じた樹脂の内側から空気を入れ膨らませることで、製品を作成する方法です。その際に、製品の形を成形するための型のことをブロー成形金型といいます。

ブロー成形における肉厚とは

ブロー成形における「肉厚」は強度に直接影響するため、品質を管理するうえで、非常に重要な要素となります。
肉厚が薄い箇所は、強度が低くなり割れやすくなります。しかし必要以上に肉厚が厚いと、樹脂の使用量が増加してしまい、コスト増加につながります。
また製品の外観品質に悪影響を及ぼすこともあります。
肉厚が均一な箇所と比べ、薄い箇所は透明度が高くなり、色が変化してしまう場合があります。
このように、肉厚が適切でないと、製品の強度、ひいては質に悪影響を及ぼします。
ブロー成形における肉厚の不良は、主に4種類に分けられます。
続いて、その4種類の不良とその原因についてご紹介します。

ブロー成形における肉厚の不良の種類とその原因

上記でも説明しましたように、ブロー成形における肉厚の不良というのは、主に4種類に分けられます。
 
⓵偏肉
②薄肉
③喰い切りの駄肉
④ヒケ(シンクマーク)
 
下記でそれぞれの不良について、ご説明いたします。

⓵偏肉

ブロー成形における肉厚の不良の一種である、偏肉とは製品の特定箇所の肉厚が不均一になる不良の事です。
製品の厚みが2mm以上の場合、厚い箇所と薄い箇所の差が約0.5mm程度発生することは、ブロー成形の性質上仕方がないのですが、それ以上の偏りになると品質に悪影響を及ぼす場合があります。
偏肉が発生する原因には金型と成形条件の二つの側面があり、金型面の原因ですと、局所的に金型の喰い切りが強すぎる場合が挙げられます。
喰い切りが強すぎると、その個所の肉厚が薄くなってしまい偏肉の原因になります。
また、成形条件の方では、溶融して押し出されたプラスチック(以後パリソン)が重力によって引っ張られて伸びるドローダウンが発生することにより、膨らむ前に偏肉が起こる原因にもなります。
これは樹脂を溶融させる温度の設定ミスや材料物性の相性により発生します。

②薄肉

薄肉とは、パリソンを膨らませる際に、製品の特定個所の肉厚が薄くなり、品質に悪影響がでる不良のことです。
薄肉が起こる原因としては、金型の観点では空気孔の位置や製品形状に対する設計が考えられます。
成形の観点では冷却時間やパリソンの状態など、成形条件設定によるものが挙げられ、薄肉が起こるプロセスとしては、金型の製品形状部分にパリソンが全体密着する前に他の場所でパリソンが冷えてしまうことが一つの例として考えられます。

③喰い切り(ピンチオフ)の駄肉

まず、ブロー成形おける喰い切りとは、金型が閉じるときに、金型の喰い切り刃と呼ばれる刃がパリソンをつぶし、製品部分と余分な箇所を分ける工程を指します。
喰い切りの駄肉とは、金型の開口部に肉だまりが発生することです。
喰い切りの際に駄肉が発生する原因としては、喰い切り刃に対して外側に沿うバリダムの形状が適切でないことが挙げられます。
喰い切り刃もしくは、バリダムの形状が適切でないと、2つの金型を重ね合わせて成形する際に、開口部にパリソンの折れ込みが発生し、盛り上がってしまうことで駄肉が発生してしまいます。

④ヒケ(シンクマーク)

ヒケとは、成形品の表面に発生する歪みや凹みの不良のことを指します。
ヒケはパリソンが冷却時に一部が収縮してしまうことで発生します。
そのため金型の冷却回路の設計が適切でなかったり、冷却回路に汚れが詰まったりすることにより、冷却機能に不備がある場合に発生します。
また、成形品の一部に厚いバリができることにより、ほかの箇所でパリソンが不足する場合があります。
厚みが異なる場合でも、パリソンの冷却速度は異なるため、製品の一部に収縮が起こってしまいヒケの原因となります。
喰い切り箇所でパリソンが押し出されることでも、金型内でパリソンが不足してしまい、厚みが変化してしまうことでも発生します。

続いて、ご説明しました4種類の肉厚の不良のそれぞれの対処法についてご説明します。

ブロー成形金型における肉厚不良の対処法

⓵喰い切り刃の調整による偏肉の防止

ブロー成形金型における偏肉の対処法としては、金型側の対策として、喰い切り刃の高さの調整を行うことで対策します。
喰い切り刃の高さを調整し、バリの厚みを調整することで、パリソンが充分に金型に行き渡るようになり、偏肉の防止に繋がります。
また、成形条件の対処法として、パリソンの温度や樹脂の種類を検討することが挙げられます。
パリソンの温度や樹脂の種類を変更し、パリソンの流動性を適切にすることで、偏肉を防止することが可能です。

②ガス抜きの設計を見直すことによる薄肉の防止

ブロー成形金型における薄肉の対処法として、金型側での対策としては、ガス抜きが適切に行うように金型の設計を見直すことが挙げられます。
具体的には、エアベントの調整やエア穴の追加を行うことで、発生したガスや空気が適切に排出されるようになり、パリソンがより等方的に膨らみやすくなるため、薄肉の防止に繋がります。

③喰い切り刃の形状変更による喰い切りの駄肉の防止

ブロー成形金型における喰い切りの駄肉の対処法として、喰い切り刃の形状をテーパ形状に変更することが挙げられます。
喰い切りの駄肉は、開口部にパリソンが折れこみ、盛り上がることで発生するため、喰い切り刃をテーパ形状にすることで防ぐことができます。

④冷却回路の水路洗浄によるヒケ(シンクマーク)の防止

ブロー成形金型におけるヒケの対処法として、金型側の対策としては、冷却回路の水路洗浄などの修理・メンテナンスを行うことが挙げられます。
金型が納品直後の頃にヒケが発生していなかった場合、使用に伴って冷却回路に汚れが蓄積し、適切に冷却を行えなくなっていることが、ヒケの原因となっている可能性があるため、冷却回路の水路洗浄を行うことで解決する場合があります。
当社では、冷却回路を追加して冷却速度の調整などを行うことも可能です。また、偏肉と同じように喰い切り刃の再設計をすることでも、ヒケの発生を防止できます。
また、成形サイクルを落とすことで、ヒケの発生を防ぐことも可能ですが、成形サイクルを落とすことは生産量を低下させるため、当社ではおすすめしません。

このように、ブロー成形金型における肉厚の不良には、金型の設計を適切に設計しなおすことで解決する場合があります。
当社の受けた相談内容と、その解決提案について一部ご紹介します。

当社の技術提案事例

事例1 金型の喰い切り刃調整により、成形品の肉厚を安定化

相談内容
こちらの事例では、ブロー成形金型の形状が取っ手のある製品の金型では、取っ手部分の肉厚の成形が安定しないとご相談頂きました。

提案内容
そこで当社では、喰い切り刃をテーパー形状にすることや、冷却回路の仕様内容を提案いたしました。
それにより、成形を安定させることで、割れが発生しないような成形をすることが可能になりました。
>>詳しく知りたい方はこちら

事例2 ブロー成形金型の喰い切り刃の調整により、バリや駄肉を防止

相談内容
こちらの事例では、ブロー成形金型の設計・製作において、お客様より成形品の喰い切りが悪いため改善をしたいとご相談頂きました。

提案内容
そこで当社では、喰い切り刃の高さを調整することを提案いたしました。
喰い切り刃の高さのバランスを保つことで、金型を損傷させることなく、問題なく喰い切りを行うことができるようになり、バリの発生やそれに伴う駄肉も防止できるようになりました。

事例3 金型洗浄機により、金型の冷却効率を改善

写真:アラッタくん

相談内容
こちらの事例では、金型の冷却が上手くいかず、サイクルタイムが悪くなっているというご相談頂きました。

提案内容
そこで当社では、自社で独自開発した金型専用の洗浄機械を用いて、金型の洗浄サービスを提案いたしました。
冷却効率が下がってしまうと、適切に冷却が行えなくなり、ヒケの原因となる可能性があるため、洗浄を実施しました。
その結果、金型冷却水の流量が2割増加し、金型の冷却効率が向上しました。
>>詳しく知りたい方はこちら

ブロー成形金型に発生する不具合なら、金型くん!メンテ改造ラボにご相談ください!

本記事では、ブロー成形金型における様々な肉厚の不良とその対処法についてご紹介しました。
肉厚の不良は、金型の設計を見直す必要がある場合が多く、金型の専門家に相談することが最も確実に不良を解決することに繋がります。
金型くん!メンテ改造ラボを運営する扶桑精工では、社内にて高い設計標準を設定しているため、高品質な金型製作の実現を可能にしています。
デンソー様を始めとした大手自動車部品メーカーの設計標準の品質も確保しており、寸法精度が高く、バリが発生しないなど高品質・長寿命な金型をお届けすることが可能です。
金型設計・製作だけではなく、金型の修理・メンテナンスまで一貫対応いたしますので、金型に関してのお悩みの際は、是非一度お気軽にご相談ください。
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