射出成形におけるガス焼けの原因とその対処法について
射出成形は、溶かしたプラスチックを金型に射出して成形する、プラスチック加工方法の一つです。しかし、このプロセスでは「ガス焼け」と呼ばれる不良が発生することがあります。ガス焼けとは、金型内のガスがうまく排出されずに高温になり、樹脂を焦がしてしまう現象です。今回は、ガス焼けの原因と対策について詳しく解説していきます。
射出成形におけるガス焼けとは
射出成形では、溶融したプラスチックを金型に注入する際に、金型内に空気が閉じ込められたり、プラスチックからガスが発生したりします。これらのガスがうまく排出されないと、圧縮されて高温になり、樹脂と接触する部分が焼けて変色したり、焦げ付いたりします。これがガス焼けです。ガス焼けが発生すると、製品の外観不良や強度低下の原因となるため、対策が必要です。
ガス焼け発生の主な原因とは
ガス焼けは、主に金型面と成形条件面の2つの原因が考えられます。
金型面の原因
エアベントの詰まり
金型には、ガスを排出するためのエアベントが設けられています。エアベントは、金型内部に侵入した空気や成形時に発生するガスを外部に逃がす役割を担っており、ガス焼けの防止に非常に重要な要素です。しかし、樹脂の残留物や異物、長年の使用によるエアベントの消失,金型から発生する摩耗粉などがエアベントに付着・堆積し、詰まりが発生することがあります。
エアベントが詰まると、ガスが排出されずに金型内部に滞留し、圧力が高まります。その結果、ガスは高温になり、樹脂と接触することでガス焼けが発生します。特に、エアベントが完全に詰まってしまうと、ガス焼けのリスクが大幅に増加します。
エアベントの詰まりは、目視では確認しにくい場合があり、ガス焼けが発生してから気づくケースも少なくありません。そのため、定期的な金型のメンテナンスやエアベントの清掃が重要となります。
適切な箇所にガス抜けが付いていない
ガス焼けを防止するには、エアベントを適切な箇所に設置することが重要です。エアベントの位置や数が不適切だと、ガスが滞留しやすくなり、ガス焼けのリスクが高まります。
例えば、エアベントが製品形状の隅や奥まった部分に設置されていない場合、ガスがその部分に溜まりやすく、ガス焼けが発生しやすくなります。また、エアベントの数が少ない場合も、ガス排出が追いつかず、ガス焼けのリスクが高まります。
さらに、エアベントのサイズや形状も重要です。エアベントが小さすぎたり、形状が複雑すぎたりすると、ガスがスムーズに排出されず、ガス焼けの原因となる可能性があります。
金型設計の段階で、製品形状や樹脂の種類などを考慮し、適切なエアベントの位置、数、サイズ、形状を決定することが重要です。
成形条件面の原因
成形圧力が高すぎる
成形圧力とは、溶融した樹脂を金型に射出する際の圧力のことで、成形品の品質に大きな影響を与える要素の一つです。成形圧力が高いほど、樹脂は金型内の隅々まで行き渡りやすくなるため、複雑な形状の製品を成形する際に有利です。しかし、成形圧力が高すぎると、ガス焼けのリスクが高まるという問題点もあります。
成形圧力が高いと、金型内部のガスが圧縮され、温度が上昇しやすくなります。特に、エアベントが詰まっている、またはエアベントの数が不足している場合には、ガスが逃げ場を失い、高温・高圧の状態になりやすいため、ガス焼けのリスクがさらに高まります。
ガス焼けを防ぐためには、必要以上に成形圧力を高く設定しないことが重要です。金型面の対策と同様に、エアベントの確認や追加を行い、ガス抜けを良くすることで、成形圧力を下げても高品質な成形品を製造することができます。
射出速度が速すぎる
射出速度とは、溶融した樹脂を金型に射出する際の速度のことです。射出速度が速いと、短時間で成形を完了できるため、生産効率の向上が見込めます。しかし、射出速度が速すぎると、ガス焼けのリスクが高まるだけでなく、他の成形不良を引き起こす可能性もあります。
射出速度が速すぎると、樹脂が金型内を急速に流れるため、ガスが逃げ遅れてしまいます。その結果、ガスが圧縮され、温度が上昇し、ガス焼けが発生しやすくなります。また、射出速度が速すぎると、樹脂が高速で金型内に流入される為、製品の形状によってはジェッティングなどの成形不良が発生する可能性もあります。
ガス焼けを防ぎ、高品質な成形品を製造するためには、射出速度を適切に調整することが重要です。射出速度を遅くすることで、ガスが逃げやすくなり、ガス焼けのリスクを抑制できます。ただし、射出速度を遅くしすぎると、充填不良やショートショットなどの別の問題が発生する可能性があるため、注意が必要です。
金型面の対策
エアベントの定期的な清掃
エアベントの定期的な清掃は、ガス焼け防止に不可欠です。エアブロー、ブラシ、専用のクリーニングツールなどを使用し、樹脂の種類や成形品、成形条件に応じて1日1回以上、または一定のショット数ごとに清掃を行いましょう。金型を分解して清掃する場合は、金型メーカーに依頼することを推奨します。フィルターの設置や金型表面のコーティングなど、エアベントの詰まりを予防する対策も有効です。
エアベントの設計
エアベントの設計も重要です。ガスが滞留しやすい製品の隅や奥まった部分、リブの付け根などにエアベントを設け、ガス排出効率を高めるためにエアベントのサイズを大きくする必要があります。ストレート形状だけでなく、L字型やU字型など、様々な形状のエアベントを検討する必要があります。
また、一体物の入子の場合には一部を割り入子にするなどしてガスの排出をスムーズに行えるようにすることが重要になります。
成形条件面の対策
射出速度の調整
射出速度を遅くすることでガスが逃げやすくなりますが、遅すぎると充填不良やショートショットなどの問題が発生する可能性があります。そのため樹脂の種類や成形品、金型構造などに応じて最適な射出速度を決定し、射出速度を段階的に変化させることでガス焼けを抑制しながら充填不良を防ぐことも可能です。
成形圧力の調整
成形圧力を下げることでガス焼けのリスクを低減できますが、低すぎると成形品にヒケやボイドなどの欠陥が生じる可能性があります。樹脂の種類や成形品、金型構造などに応じて最適な成形圧力を決定し、成形圧力を一定時間保持する保圧を行うことで成形品の寸法精度を向上させることができます。
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本記事では、射出成形金型における不良「ガス焼け」の原因と対策方法についてご紹介しました。
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