射出成形時に発生する「シルバーストリーク」への対策方法
射出成形において発生する「シルバーストリーク」(以下、シルバーという)とは、成形品の表面に銀色や灰色の線状や、点状の模様が現れる不具合のことです。シルバーは、成形品の外観品質を著しく低下させることや、製品の機能に悪影響を及ぼす場合があります。
本記事では、シルバーが発生する原因と、その対策についてご紹介いたします。
シルバーが発生する原因とは
シルバーは発生する原因は、主に3つあり
①プラスチック樹脂に含まれる水分
②金型の形状
③成形時の条件
これらに原因がある場合が、多くを占めます。
①プラスチック樹脂に含まれる水分
シルバーが発生する原因として、一番可能性が高いのは、プラスチック樹脂に含まれる水分が原因の場合です。プラスチック樹脂は、空気中の水分を吸収している場合があるため、プラスチック樹脂内の水分が、射出成形時の過熱よって、水蒸気となりシルバーの原因となります。
②金型の形状
金型の形状が適切でないと、空気や発生したガスを排出することができなくなります。それにより、射出成形時に空気やガスを含んだ樹脂が引き延ばされ、シルバーが生じてしまいます。
また、ゲートやスプール、ランナーといった部分の設計が適切でないと、溶解した樹脂が均等に流れ込むことができず、これもシルバーの発生の原因となります。
③成形時の条件
成形時の金型とシリンダーの温度や、射出時の圧力もシルバーの発生に影響を及ぼします。金型の温度が低いと射出された樹脂が金型に接触した瞬間に急速に冷却されます。それにより、樹脂が金型内を均一に流れることが難しくなり、シルバーの原因となります。同様に、シリンダーの温度もが低い場合も、流動性が低下するため注意を払う必要があります。逆に、シリンダーの温度が高すぎると、樹脂からガスが発生し、シルバーの原因となり射出時の圧力が低いと、これも流動性の低下からシルバーの原因となります。
また、射出速度,スクリュー回転が速すぎるとせん断熱により熱分解でガスが発生しシルバーの原因となります。
次に上記でご紹介した、シルバーを発生させないための対策について、ご紹介します。
射出成形金型におけるシルバーの対策方法
下記にて、対策方法を3つ紹介いたします。
① 樹脂に含まれる水分を成形前に乾燥させる
プラスチック樹脂に含まれる水分が原因で発生するシルバーは、成形を行う前に充分に乾燥させることで、対策できます。しかし一つ注意を払うところがあり、金型のほうにも水分が付着していないか、確認することが必要です。金型の洗浄や、オーバーホール後は、金型に水分が残っていることがあり、しっかり拭き取る必要があります。
② ガスベントの設計を変更し、充分なガス抜きをする
金型内に、ガスベントといわれる空気やガスを逃がす通り道を設計することで、適切に空気やガスを排出することができ、シルバーを防ぐことができます。ガスベントの幅や数は、用いるプラスチック樹脂の種類によって適切な設計が重要となります。粘度が高いプラスチック樹脂の場合は、ガスベントの幅を狭くし、数を増やすなどの工夫をすることで、充分なガス抜きを行うことで、シルバーの発生を防止できます。
また、ゲートやスプール、ランナーといった部分の設計を見直すことも、シルバーの対策につながります。金型の構造を最適化することは、自社内で行うことは困難な場合もあるため、一度外部の専門家に相談することも、品質向上につながります。
③ 成形条件の見直しをする
上記で、温度や圧力が低いと流動性が低下並びに、射出速度やスクリュー回転が速いとせん断熱による熱分解でガスが発生し、シルバーの原因となると説明しましたが、温度や、圧力を単に上げたり、速度を下げれば解決するかというとそうではありません。温度が高くなると、ガスが発生することや、成形品を冷やす時間が長くなるため成形サイクルが増加し、生産性の低下につながり、速度を落とせばショートショットになり不良が発生します。つまり、成形時の適切な温度や圧力は、プラスチック樹脂の種類や、射出成形金型の構造などにより、変化するため何度も試行して最適な条件を模索することが一番です。
当社の技術提案事例
当社では、シルバーを含めた様々な金型のご相談を受けております。当社が受けた相談内容と、その解決提案について一部ご紹介します。
事例1 ガス抜け改善のための、ガスベントの入れなおし事例
お客様からの相談
お客様より、金型のガス抜けが年々悪くなってきており、成形不良が起きることがあるというご相談がありました。金型は長期間の使用により、接触面の腐食や、圧縮・摩耗により、ベント溝が浅くなったり、溝がなくなったりすることがあります。この結果、成形品表面の気泡や異形状など、不良が起きやすくなります。
当社の提案
本事例には、ベントの入れ直しを提案し実施しました。その結果、金型のガス抜けが良くなり、成形不良が改善されました。
事例2 金型の微調整による形状精度の改善
お客様からの相談
こちらの事例では、お客様よりハイサイクル成形のため、丸型の製品を成形したいが成形品が楕円になってしまうというご相談を受けました。
当社の提案
本事例では、成形品の測定成形品の寸法を測定し、金型を微調整し、取り出した際に丸型になるようにいたしました。
射出成形金型に発生する不具合なら、金型くん!メンテ改造ラボにご相談ください!
本記事では、射出成形金型に発生するシルバーとその対策についてご紹介しました。金型の形状の見直しなど、中々自社で行うことには難しい点もあります。
金型くん!メンテ改造ラボを運営する扶桑精工では、社内にて高い設計標準を設定しているため、高品質な金型製作を実現を可能にしています。デンソー様を始めとした大手自動車部品メーカーの設計標準の品質も確保しており、寸法精度が高く、バリが発生しないなど高品質・長寿命な金型をお届けすることが可能です。
金型設計・製作だけではなく、金型の修理・メンテナンスまで一貫対応いたしますので、金型に関してのお悩みの際は、是非一度お気軽にご相談ください。